━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ No.083 ━ 2019.06.17 ━
さ く ら 中 央 税 理 士 法 人 か ら の お 知 ら せ
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いつも大変お世話になっております。
さくら中央税理士法人です。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
===税務関連トピックス=======================
┏◆相続税法の改正(配偶者居住権の創設)
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平成30年7月に民法の相続税法が大きく改正されました。
この改正により、残された配偶者が安心して生活ができるよう「配偶者居住権」
が新たに規定されました。
今回は、この配偶者居住権をテーマとします。
■□これまでの問題点と創設の経緯□■
[問題点(1)自宅はあるけれど、その他の相続財産がない場合]
例えば、自宅3500万円と現金1500万円の合計5,000万円の財産を配偶者と子供
の2名で分割します。
子供が「自宅は欲しくないが財産は均等に欲しい」と言った場合、配偶者が
自宅を相続すると、均等に配分できないため不足分は配偶者が補てんをする
必要があります。
配偶者に財産があれば補てんできるのですが、財産がない場合には現金を作る
ために自宅を売却せざるを得なくなってしまいます。
[問題点(2)配偶者以外の者(子供等)が自宅を相続した場合]
子供が父親から自宅を相続で取得した後に、その子供が母親より先に亡くなっ
てしまうと、その子供の配偶者若しくは孫が自宅を相続します。
その後、配偶者・孫から立ち退きを求められると、母親は自宅を出ていかざるを
得ないことになり、住み慣れた自宅を離れなければならなくなります。
[解消するために配偶者居住権が創設]
このような事態が起こらないように、残された配偶者が、安心して住み慣れた
自宅に継続して、無償で住むことができる権利として「配偶者居住権」が創設
されました。
■□配偶者居住権の創設で変わること□■
これまでは「所有権」全体の評価を行っていましたが、
改正によって配偶者居住権を取得すると、「居住する権利(配偶者居住権)」と
「所有権」に区分できるようになります(下図を参照)。
《従来》 《改正》
《建物》 所有権 → ┏ ①(配偶者居住権付き)建物の所有権
┗ ②配偶者居住権
《土地》 所有権 → ┏ ③(配偶者居住権付き)土地の所有権
┗ ④配偶者居住権
■□財産評価について□■
「居住する権利(配偶者居住権)」と「所有権」は建物と土地それぞれに設定され、
以下の通り評価を行います。
《建物》
①(配偶者居住権付き)建物の所有権
建物の相続税評価額
×(残存耐用年数-居住権の存続年数/残存耐用年数)
× 存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
※残存耐用年数とは、住宅用の耐用年数の1.5-築年数の年数です
※配偶者の残存年数とは、配偶者居住権の存続期間が終身である場合には
配偶者の平均余命年数
②配偶者居住権
建物の相続税評価額 - 建物の所有権(上記①)
《土地》
③(配偶者居住権付き)土地の所有権
土地の相続税評価額
× 存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
④配偶者居住権
土地の相続税評価額 - 土地の所有権(上記③)
上記の通り、「①建物の所有権、③土地の所有権」の評価には調整が入ります。
「②、④の配偶者居住権」の評価は、土地、建物の従来の評価から「所有権」を
除いたものとなります。
■□計算例□■
以下の事例に沿って評価を行います。
建物の相続税評価 500万円
法定耐用年数 33年(22年×1.5)
築年数 10年
宅地の相続税評価 3,000万円
配偶者の相続時の年齢 70歳
平均余命年数(女性) 19年
①(配偶者居住権付き)建物の所有権
500万円×((23年-19年)/23年)×0.57=50万円
残存耐用年数 33年-10年=23年
②配偶者居住権
500万円-50万円(①建物の所有権)=450万円
《土地》
③(配偶者居住権付き)土地の所有権
3,000万円×0.57=1,710万円
④配偶者居住権
3,000万円-1,710万円(③土地の所有権)=1,290万円
■□配偶者居住権の効果□■
配偶者居住権は、
相続時に配偶者居住権を取得するか、しないかを選択することになります。
この配偶者居住権を選択することで、先にご紹介した問題点は以下のように
解消することができます。
[問題点(1)自宅はあるけれど、その他の相続財産がない場合]
自宅3,500万円の評価は配偶者居住権の設定により、
建物450万円+土地1,290万円 合計1,740万円(上記事例)になります。
以下のように分割することで、財産を均等に分けることができます。
配偶者:配偶者居住権 1,740万円 + 現金 760万円 = 2,500万円
子供: 所有権部分 1,760万円 + 現金 740万円 = 2,500万円
[問題点(2)配偶者以外の者(子供等)が自宅を相続した場合]
最初の父親からの相続の際に、配偶者が配偶者居住権を取得することで
先に子供が死亡した場合でも、配偶者居住権は維持できます。
■□最後に□■
配偶者居住権の施行時期は2020年4月1日になります。
施行日前で、配偶者が配偶者居住権を取得した後の取り扱いとして、
配偶者が死亡した後、配偶者居住権はなくなります。
その際、どのように課税されるのか等、明確になっていない部分が
ありますので、今後の動向に注目してまいります。
ご不明な点がございましたら、さくら中央税理士法人までお問合せください。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
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